不協和音が流れている中で、ジリリリリーンと遠くで電話が鳴っている。

音に導かれて歩くと今では珍しい黒電話が置かれていた。
近くのメモには『電話に出てください』と書かれてある。


「……出たい? 怖いなら俺が出ようか?」
「え、えっと……」


どうせなら体験したい気持ちと、出たら怖いことになるのではないかという不安で心が揺れる。
だけどずっと来たかったお化け屋敷。
彼にも付き合ってもらっているんだし、ここは怖くても楽しまないと損だ。


「私が――」
「どうして出てくれないの?」


後ろから聞こえてきた声に振り返ると、そこにはいつの間にか人が立っていた。


「きゃーっ!!」
「あ、おいっ、早坂!」


桐谷くんの声を無視して先の通路へと走って逃げる。
不気味さが少し落ち着いた階段まで来て、やっと我に返った。


お、置いてきちゃった……!
どうしよう、怖すぎて桐谷くんのことを全く考えられていなかった。

戻る?
だけどひとりでさっきまでのところを歩くのは怖い……!

じゃあここで待つ?
だけどこんな不気味なところにひとりでいるのも怖い……!


どうしようかと悩んでいると、後ろから足音が近づいてくる。