ここは話題を変えようと口を開く。


「……桐谷くんっていじわるだよね。彼女さんたちにもこんな風に接してたの?」

「は? なんで急に恋バナ? つか俺、今彼女いないし」

「それは……気になったから」


さっき桐谷くんを見て騒いでいた女の子たちはいるか、ちらりと周りを見る。
するとそんな私を見てなにか察したのか、目の前の彼は小さくため息をついた。


「好きな人には優しくするよ、俺だって」


好きな人……
桐谷くんの言葉が胸に引っかかって重くのしかかる。


「……そんな顔しちゃって。どういう意味なの、それ」

「え?」

「……いや。つかお前は?」

「私、は……」


まさか聞き返されるとは思わず口ごもる。
なにを言っても立派に恋をしている彼の前では粗末に見えてしまいそうで、小さく首を振った。


「そんな特筆すべきことはない、かな」
「……ふーん」


なにも突っ込まれず話が終わったことに安心する。
大きな口に吸いこまれるハンバーガーを見ていると、ふと気になった。


「そういえば、桐谷くんはなににしたの?」
「ん、チーズバーガー」


目線を彼のトレーに下ろすと、ハンバーガーの横にはオレンジジュースが並んでいる。

これが桐谷くんの好きなもの。
なんだか彼のことを少し知れた気がして嬉しくなる。

そんな風に考えて、さっき彼が言っていたことはこういうことなのだろうかと思った。