どうしようかと少し悩んだけれどすぐに耐えられなくなって口を開いた。


「は、ハンバーガー食べたい、です」
「ふーん、ハンバーガーね」


私としては勇気を出して言ったのに、彼は雑な相槌をひとつだけするとパンフレットを覗き込む。


「ん、じゃ行くか」

「えっ、行くってどこに!?」

「ハンバーガー食いに」

「えっ、でもさっき決定するわけじゃないって」

「俺も食いたいんだからいいだろ。嫌なもんだったら嫌ってちゃんと言うし。俺が遠慮するタイプだと思うか?」

「それは……思わない、けど」

「だろ?」


少し得意げに笑う桐谷くんについていく。
風がさらりと彼の明るい髪の毛を撫でた。


「なあ、べつに悪いもんじゃねーだろ?」


気のせいか、さっきよりも優しい声で話しかけられる。
なんのことだろうと一瞬思ったけれど、さっきの会話の続きだと気づいて頷いた。


「自分の本音話すことでさ、相手にもやっと自分のこと知ってもらえんの。小っちゃいことからでいいから、訓練しないとな」


その言葉が、どうしてかはわからないけれど、訓練につきやってやるという風に聞こえて、勝手に嬉しくなる。

これが妄想でも、痛い勘違いでもいい。


「……うん、ありがとう」


そんな風に思っていることが、どうかバレませんようにと願いながら彼に笑いかけた。