「すっごく楽しかったね!」


ジェットコースターを乗り終えて、桐谷くんとふたりで歩く。
非日常なスリルある体験ができて、思いっきり叫ぶこともできて、私の気分はまだ高揚していた。


「ははっ、そーだな」
「……え? な、なに?」


彼が私の顔を見て笑っているから、なんだろうと少し冷静になり聞いてみる。


「いや? 隣に座ってる俺のことなんて眼中にないくらい楽しんでたなと思って」

「えっ、そ、そんなことないけど」


楽しんでいたというのは彼の言う通りだ。
だけどそれは、隣で一緒に楽しんでくれる桐谷くんがいたからこそ。

眼中にないなんてそんなことは……


「ホントかあ~? 想像つかないとか言われたから俺も叫んでたんですけど。早坂サンには聞こえてました?」

「えっ!? それは……だって、私も、周りの人も叫んでたし……!」

「ハイハイ、心の底から楽しんでもらえたようで何よりです~」

「うっ、ごめんね桐谷くん。次乗るときはちゃんと聞くから!」

「いや、べつにそこまで聞いてほしいわけじゃねえから。つか恥ずいわ」


おかしそうに笑う彼につられて私も笑ってしまう。
ジェットコースターに乗る前はあんなに悩んでいたことが嘘のように、桐谷くんとの会話が弾む。

次に乗る乗り物もあっさり決まってそれを楽しんだあと、時計の短い針は12と1の間にあった。