「服は割となんでも好きなの。こういうかわいいのも好きだし、桐谷くんの言ってたロックなのも、かっこいい服装も好き」

「ふーん。じゃあなんで今日はかわいいやつ選んだんだ?」

「え、それは……」


男の子はかわいい服装が好きだと思ったから。
思い浮かんだ言葉をそのまま口にしそうになってつぐむ。

そんなことを素直に言ったらなんてからかわれるかわからない。


「きょ、今日はかわいいのが着たい気分だったから! それに、ロック系なファッションとかはあんまり着ないんだ。私には似合わないし、難しいし」


嘘だけど嘘じゃない。
桐谷くんは「へえ」とこぼしたあと、私を見て口元を緩めた。


「そういうのも似合いそうだけどな。それもかわいいし」


着ている服を指さして、彼はためらいもなく言う。
少し胸がチクっと痛むのにそれ以上に嬉しくて、変ににやけてしまうのを笑って誤魔化した。


「あはは、ありがとう。桐谷くんも今日の洋服似合っててかっこいいよ」


私が危惧していたことを彼は何も気にしていないようだったから素直に伝える。

もしかしたら私と同じく、少しはドキッとしてくれるんじゃないかと期待したけれど――


「さすが早坂サンは褒め上手ダナー」


なんて茶化されて終わってしまった。