お化け屋敷に行くのも、ジェットコースターに乗るのもいつぶりだろう。

中学の友だちと一緒に行くことはなかったし、七瀬ちゃんたちとも一緒に行ったことはない。
ひとりで行って楽しい場所でもないから、5年以上は行ってないと思う。

だからこそ久々に自分が本当に好きなものを楽しめるというのが嬉しかった。



早起きして朝ご飯を食べて、さっそく準備にとりかかる。
桐谷くんの隣に立つからにはオシャレしないと、私の心がつぶれてしまうだろうから。

それにふたりきり、だし……

そう考えるとなんだか胸のあたりがむずむずして落ち着かない。


いやいや、相手は私のこと絶対なにも思ってないって。
事故で変な話聞いちゃって、呆れて、同情して、彼の優しさで私に付き合ってくれてるだけ。

それに私だって……
“あの”桐谷くんだよ?

好きになる権利なんて、自分にはきっとない。
そうわかっていても、心の片隅でドキドキしているのを抑えられなかった。