嬉しいけど戸惑う。

本当に?

私がなにを好きかまだ知らないのに、それでも一緒にと言える彼が羨ましいけれど怖い。

かたんかたんと心の針が傾いていく。


「なあ、大丈夫だから言ってみ?」
「う……」


優しい声と表情にほだされてしまう。


「……絶対に笑わない?」
「ん」


桐谷くんがこくりと頷いたのを見て、針は簡単に振り切れた。
息を吸って小さな声で話す。


「……私、お化け屋敷とジェットコースターが好きなの」

「……へえ」


ああ、よかった。
心の中でなにを思っているかはわからないけれど、少なくともバカにはされなかった。

ほっと安心して顔を上げると、桐谷くんは手を顔に当てて震えている。

え、と疑問に思った瞬間、彼はこらえられなくなったのか吹き出した。


「ぶっ、あははははっ!」

「ちょっ、ちょっと! 笑わないって言ったのに!」

「いやだって、深刻そうな顔するから身構えてたのに、割と普通なこと言うからおもろくてさ。いやでもたしかに意外か? あははっ、あーっ腹いてえ」


笑ってる、いや大笑いしてる。
それもバカにされている気がする!