「お母さんが、なに?」
「えーっと……」


さすがに聞き流してくれないか……
こんなのまるで、心配してくださいと言っているようなものだ。

自分に嫌悪感を抱きながら、諦めて口を開く。


「その……実は私、手芸好きじゃないの。だけどそのことをお母さんには伝えられてなくて。だからお母さんが私のために手芸道具を買ってきてくれたときは、嘘がバレないように、こうしてなにか作ってるの」

「へえ……お前、ほんと難儀な性格してんのな」

「うう……それは自分でも思ってる」


桐谷くんは、呆れたような同情しているような、そんな顔で私を見ていた。

難儀な性格……
その通りだと思う。

NOと言えて一歩進めた気がしていたけれど、次の瞬間にはまた別の問題が降りかかってくる。

今まで自分から逃げていた付けが回ってきたんだろうか。

少しは成長できたんじゃないかと喜んだ気持ちも、こうしてすぐにしぼむ。