慌てて口を開こうとすると、桐谷くんの「すげえな」という声で押しとどまった。


「こんな特技あったのかよ、もう売り物じゃん」


彼はコースターを見ながら目を細める。
ドキドキと焦っていた心が落ち着いていく。

どうやら自分が勝手に勘違いしていただけで、桐谷くんは良い意味で驚いていただけらしい。


「そんなにすごいものじゃないと思うけど……でも、ありがとう。嬉しい」


好きで作ったものではない。
だけどやっぱり褒められるのは嬉しくて口元がゆるむ。


「これって作んのに何時間くらいかかんの?」

「うーん……2時間、3時間くらいかな」

「へえ、じゃあ少なくとも3000円くらいの価値
か」

「えっ」


桐谷くんの言葉に驚いて思わず声を上げてしまう。
だけど目の前の彼は真剣な表情をしていて、また心が焦る。


「プロじゃないし、そんな価値つかないよ!? もしお礼とか考えてくれてるなら、ほんとにいらないからね! そんなつもりで渡したんじゃないし、それに私、お母さんが……」


そこまで言ってハッとなり口を閉じる。

また勝手に焦って、自分ばかり一方的に話してしまった。
それどころかいらないところまで。

いつもは気を付けているのに、桐谷くんの前だともう気を抜いてしまっているのかもしれない。