「にゃー」
「しいちゃん?」


かわいい鳴き声をあげて私の手にすり寄る。
その姿があまりにもかわいくて癒された。


「ふふっ、今日は甘えんぼさんなの?」


優しく頭をなでると、されるがままに受け止めてくれる。
そんな様子を隣で見ていた桐谷くんが優しい表情で微笑んだ。


「猫にはかなわねーわ」
「え?」
「猫ってすげーなってこと」


そう言う彼の声音も優しい。


なんだろう……
思わずぎゅっと胸のあたりを触る。


桐谷くんがこんな表情をしているのをあまり見たことがない。
そしてそんな顔を自分に向けられているという事実に、心臓が無性にドキドキして落ち着かない。

そんな自分に気付かれたくなくて、慌てて口を開いた。


「え、えーっと、そういえばどうして桐谷くんはここに来てるの?」


ずっと気になっていたことを尋ねてみた。

最近は私の話を聞くために来てくれていたこともあったけれど、いちばん最初――ガレージで初めて会ったときは違う。


猫が好きだから、暇だから、ソファー気に入ってるから。

彼の返答を頭の中で予想する。
だけどそれは全部外れた。