……って、そうじゃなくて。


「しいちゃん、桐谷くんと遊びたいだけだと思うけど……」


少なくとも私のために怒っているわけではないと思う。
そりゃもちろん、そうだったら好かれているということだし嬉しいけれど。

だけどしいちゃんは猫っぽい性格そのものだ。
マイペースで自由奔放、ツンデレな気分屋。

それがかわいいんだけれど、全然なついてはくれない。


つまりなにが言いたいかというと、私のためにしいちゃんが怒ってくれたわけではない、ということだ。

そんな私の言葉を聞いた桐谷くんがくすっと笑う。


「機嫌なおった?」
「う……べつに機嫌が悪かったわけじゃ……」


居心地が悪くて目をそらす。

ほかの人の前だったら、どれだけ腹が立つことを言われても笑顔でいようと努力するのに。
桐谷くん相手だと自分の感情に嘘をつかないでいられるのはどうしてだろう。

無理に笑わないでいいという今の状況は、なんだかすごく楽だ。