「ち、ちがうよ!? そういう意味じゃ……!」

「はははっ、わかってるわかってる。恋愛じゃなくて友愛だろ?」


恥ずかしくてわざわざ避けたワードを言われてドキッとする。
やっと彼にからかわれていたのだと気づいた。


ああもう……!


顔に熱が集まっているのが嫌でもわかる。
これじゃあ彼の思うつぼだ。

悔しくて顔をそむけると、桐谷くんが笑いながら謝ってくる。


少なくともこの熱が冷めるまでは振り返ったりしてやらないんだから。


自分がムキになっていることを自覚しながら、変にドキドキしている鼓動を落ち着けようと深呼吸する。

すると突然「おわっ」という声が聞こえて、思わず桐谷くんの方へ振り返った。


「なんだよ、早坂のことが気になって来たのか?」


彼の足元には、さっきまでソファーに座っていたはずのしいちゃんがいた。
前足でちょいちょいっと何度も桐谷くんの足をタッチする。


「なんだ? 早坂のことからかいすぎだって怒ってんのか?」


そう笑いながらしいちゃんの前足を優しくぎゅっと受け止めた。


「はいはい、悪かったよ。もうからかわねーから」


まるで兄かのような物言いが目新しくて、そういえば彼に兄弟はいないのではなかったかとふと考える。