こ、これは……取ってほしいってこと、だよね?

なんだか無防備な桐谷くんの姿にドキッとする。
震えそうな手を伸ばして、今度こそゴミをとった。


「……とれたよ」
「ありがと」


私は慣れないことでこんなに緊張しているのに、立ち上がった彼は全くそんな風には見えない。

その違いが少し恨めしくて、羨ましかった。


「お前も起きたのか」


桐谷くんはしいちゃんを見つけると優しく一撫でする。
そこでさっき「にゃー」と声をかけられたことを思い出した。


「大きい声出してごめんね、びっくりしたよね」


謝ると、私の方へてちてちと歩いてくる。


「どうしたの? お腹すいた?」


聞きながら斜め後ろにあるしいちゃんのお皿を見る。
だけどそこにはキャットフードがまだ入っていた。


「ははっ、急に撫でてほしくなったか?」


桐谷くんは笑ってそう言う。
いつも塩対応なしいちゃんがそんな風に思うなんてあるだろうか、と疑問を抱きながら優しく撫でてみる。

すると私の手に頭をスリスリしてきた。