「……早坂?」
「……う、うん」
「……はよ」
「お、おはよう……」


桐谷くんが今なにを思っているのかわからないまま挨拶を返す。
気まずいと感じているのは私だけだろうか。

あれこれと考えている隙に、目の前の彼はソファーからだるそうに起き上がる。


「あ、あの、起こしちゃってごめんね」
「いいよべつに。暇だから寝てただけだし」


桐谷くんの言葉に、そっかと小さく返事する。
ちくちくした罪悪感が少し消えて丸くなった気がした。


「つーか珍しいな、早坂が土曜のこんな時間に来てんの」

「うん、今日はバイトないから。桐谷くんも珍しいね」

「俺もバイト休み。人多いってシフトカットされてさ」


そう言って立ち上がろうとした彼に、思わず「待って!」と声をかけた。
少し驚いた顔でこちらを見る桐谷くんと目が合って、心臓がドキドキと焦り始める。


「えっと、髪の毛にゴミついてたから……」
「ああ」


そういうことかと納得した表情をしたあと、なにも言わず私に頭を差し出してくる。