「結衣、いつもひとりにしてごめんね」


母の悲しそうな声で顔を上げる。


「もう、大丈夫だよ。友達もいるし――」
「結衣のこと寂しくさせてない?」


その言葉に一瞬息が詰まる。
だけどにこっと笑って誤魔化した。


「お母さん、私もう高校生だよ。平気だから気にしないで」


自分が今いちばん言いたくないことを、もうひとりの自分は軽々と口にしてしまう。
でもこの言葉を聞いて母が「そうだね」とおかしそうに笑うから。



寂しいと言ったら困らせてしまう。
高校生にもなって甘えたら困惑させてしまう。

そうやって遠慮しているからだろうか。
いつの間にか開いてしまったこの隙間が切ない。