ガレージを後にして家に帰る。
ガチャリと扉を開けて、すぐに違和感に気がついた。

急いでリビングに向かうと母の背中が見える。
声をかける前に母がくるりと振り向いた。


「あ、おかえり結衣」
「ただいま……今日は早かったんだね」
「うん、珍しく早上がり。夜ご飯、からあげでいい?」
「え、うん。でも私作るよ」


急いでかばんを置いて、母の近くまで行く。
だけどお母さんは朗らかに笑った。


「いいのいいの。たまにはお母さんの手料理食べてもらわなくっちゃ」

「でも……」

「ほら、学校の宿題でもして待ってて、ね」


そう言ってキッチンから追い出されてしまった。


私の家は母子家庭だ。
母は私のために朝から夜遅くまで働いている。
こうして夕方に帰ってきたのはいつぶりだろう。

休めるときに休んでほしいから私が作るって言っているのに、母は譲ろうとしない。
それどころか手間がかかる油料理だなんて。


……私が、からあげ好きだから。


嬉しいのにどこか痛い。
母の背中になんだか胸が熱くなるのを知らんぷりして、リビングを後にした。