「頑張ったんだな」

「うん。でも頑張れたのは桐谷くんのおかげでもあるから、お礼が言いたくて。ほんと、ありがとう」

「どーいたしまして」


ここで『俺はなにもしてないよ、君が自分で頑張ったからだよ』なんて、漫画でよく聞くセリフを言わずに、お礼を素直に受け取ってくれるのが桐谷くんらしいな、と感じる。


「早く話したいなって思ってたの。言えてスッキリした」


やりたいことリストにひとつチェックをつけることができて満足だ。
私はただそういうポジティブな気持ちで言っただけなのに、隣の桐谷くんはちらりとこちらを見る。


「それなら学校で言ってくれればよかったのに」
「え? そ、それはちょっと……」


まさかそこに引っかかるとは思わなかった。
なんて言ったらいいかわからず曖昧に返すと、桐谷くんの眉間にしわが寄る。


「は? なんで?」
「う、うーん、その……」


桐谷くんは私の答えをじっと待っている。

どうしよう……
正直に言う?

でもそれは少し恥ずかしいし、気まずいし、言いにくい……
かと言って誤魔化せるような雰囲気でもない。