「……ごめんね、違うの、桐谷くんの言葉が嬉しくて」

「……うん」

「ありがとう……すごく、元気出た」


その言葉は本当だけど、いや本当だからこそ涙がまだ止まらない。
スカートが色を変えて水分を吸い取っていく。


「……私、がんばってみる」


桐谷くんが私の話を聞いてくれて、温かい言葉をくれたから。
勇気を出そうって、その頑張り方がわかった気がするから。


「……応援する、けど。ちょっとずつでいいんじゃね? いきなりだとまたしんどくなるだろうし……」

「……うん、じゃあちょっとずつがんばる」

「おう……がんばれ」


桐谷くんの声がまだちょっと困惑の色を含んでいて、やっぱり少しおかしかった。
背中の温かさの正体が彼だと思うと、どこか非現実的で、不思議に感じる。


「……桐谷くん。どうしてこんなに優しくしてくれるの?」

「え、そりゃ……俺が優しいから?」

「……ふふっ」

「あ、お前また笑っただろ! 実はもう泣き止んでんじゃねーだろーな!?」

「わっ、やめてやめて、まだダメだからーっ!」


きれいな星が瞬く夜、猫が呆れたように小さく鳴いた。