「それに早坂って、自分のこと偽ってるっつーより、言ってないだけじゃね? まあ好きなもん嘘つくとかめんどくさいことはしてるけど……」


きらきらと暗い中で光が主張する。

自分を偽ってるのではなく、自分のことを言っていないだけ。
たしかにそうなのかもしれない。
いや、もし本当はそうじゃなかったのだとしても、私では考えつかないことだった。

桐谷くんは私を見て笑う。


「だからさ、そんな迷子になんなくてもいいじゃん。早坂はもとから優しい奴だよ」

「え……」

「ま、優しく見えるのは弱い奴だからだとか、いろいろ言うやつもいるけ、ど……は!?」


桐谷くんは私を見るなりぎょっとした顔をした。
どうしてなのか理由に気付いて、すぐに顔を伏せる。


「え? おいマジか……な、なんで泣くんだよ……」

「ご、ごめんっ、泣きたくなんかないんだけど勝手に涙が……」

「はあ? なんだよそれ……」


困惑した声が隣から聞こえてくる。
すると励ますように背中を撫でられた。

だけどその手つきがなんだかぎこちなく感じて、思わずふふっと笑ってしまう。


「なんで笑うんだよ……」

「桐谷くんって意外に女の子を慰めるの慣れてないんだなって思って……」

「はあ!?」

心外だと言わんばかりの声だったけれど、手はそのままだった。
それがまた優しく心に沁みる。