それから美容。
校則が緩いのもあってか、みんな学校にメイクをして来ている。

最初は驚いたけど、自分で実際にしてみて、毎朝メイクをするために早起きをすることも、かわいくなる努力をすることも大変なのだと知った。


そして恋愛。
少女漫画のように甘酸っぱくて幸せなものだと思っていたけど、現実は違う。

瑠々ちゃんのように怒る出来事もあれば、涙が枯れてしまうような悲しい出来事もいっぱいある。

なにより、恋人をつくるには行動しないといけないし、できたとしても関係を続ける努力というのは、幸せだとしても大変だ。


「バイトとかオシャレとか恋とか、みんなしてるし身近に感じるけど、全部簡単なことじゃない。それを当たり前かのように毎日続けてるみんなはすごいって、尊敬するようになって、好きになって……」


震えを隠すために、ぎゅっとこぶしを握った。
誰にも言ったことがない悩みを打ち明けるのは、少し勇気がいる。

だけど桐谷くんの優しい温かさを思い出して口を開いた。


「……自分を偽るんじゃなかったなって、いまさら後悔してるの」


本当の自分でみんなと接したいと思うくらい、いつの間にか七瀬ちゃんたちのことを好きになっていた。


「じゃあこれから素の自分で話せばいいじゃんって思うんだけどね、最近本当の自分ってどんな感じかわからなくなったりしちゃって」


私のことは私にしかわからない。
そうであるはずなのに迷子になってしまって、情けなくて恥ずかしい。

あはは、と笑ってみせるけど、すぐに空気になって消えていった。