「ま、べつに無理に話せとは言わねえけど」


そう言うと彼はふいっと横を向いてしまう。

桐谷くんの言葉を聞いて、理解して、受け取って。
心がじんわりじんわりと時間をかけて温かくなる。


「……心配、してくれたの?」

「はあ? 当たり前だろ、あんな話聞いたら誰だって気になるわ」

「う……ご、ごめんね」

「べつに謝んなくてもいーけど……」


居心地悪そうに頭をかく桐谷くんが何故かおかしくて笑ってしまう。
すると眉間にしわを寄せた彼に睨まれた。


「なに笑ってんだよ」
「ごめん、なんか笑えてきちゃって」


素直に謝ると、桐谷くんは小さくため息をついた。


「ま、笑う元気があるならいいけど」


その言葉で、本当に心配してくれていたのだとわかって心臓が優しく痛む。


「……ありがとう、桐谷くん」


いつもは冷たくも見える彼の優しさに気付いて、そしてそれが嬉しくて口元が緩む。

……やっぱり優しいんだなあ。
その温かさが今の私にはすごく沁みて、そのまま目からこぼれてしまいそうだった。


「……じゃあ、お言葉に甘えて愚痴ってもいいかな」

「どーぞ」


心配したとかなんとか言っておきながら、変わらずぶっきらぼうな桐谷くんに安心して、心のまま吐き出した。