バイト終わり、もうすっかり暗くなった道を歩く。
いつもの癖でガレージへと視線を移すと、そこに誰かいるのがわかった。

素通りするのも変な気がして近づくと、彼はすぐ私に気付いて顔を上げた。


「お疲れ」
「う、うん……ありがとう」
「座れば?」
「……じゃあ、お邪魔します」


コンクリートの上に座ると、その冷たさが肌に伝わる。


「……ずっといたの?」
「まあ、暇だったし」


そう言う桐谷くんは前に比べてずいぶんしいちゃんと仲良くなったみたいで、抱っこしながら頭を撫でた。
しいちゃんは気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いている。


「こいつに愚痴るだけで楽になるんだったらいいけど」

「え……?」


顔を上げると、どこか真面目な顔をした桐谷くんと目が合う。


「でもこいつ、聞いてくれるだけでなにも言わねえだろ」


目の前の彼がなにを言いたいのかわからず、じっと見つめたまま言葉を待つ。


「俺だったら、お前が変にネガティブなこと言い出したときツッコめるなと思って」

「え……」


そこまで聞いて、やっと桐谷くんの言いたいことがわかった。
だけど信じられなくて、思わずぱちぱちと瞬きする。