「あ、そういえばねえ~、好きなアイドルのライブ決まったの~」

「ええ! 瑠々の好きなって、あのイケメンの!?」

「そうだよ~。でね、だれか一緒に行ってくれないかなあって」

「え! 行きたい行きたい!」

「わ――」


私も行きたい、そう言いかけて口ごもった。
自分の気持ちを、人の目を異常に気にする怖がりな自分がフタをする。


もし、もしこれでまた笑われたら、バカにされたら、嫌われたら。


瑠々ちゃんたちはそんな人たちじゃないって、あの人たちとは違うってわかってるのに、信じてるのに、それでもあの日々がフラッシュバックする。


仮面を被った私って、アイドル好きだっけ。
好きだって言って引かれないかな、みんなはどう思うんだろう。
意外だって笑うかな、それとも一緒だって喜んでくれる?

わかんない、怖い、怖い、怖い、考えたくない。
だからこういうときはいつも――


「じゃあふたりで行ってきたら?」
「ええ~、なーちゃんは行ってくれないの~」
「ごめんパス。金欠だから」
「じゃあふたりで行こ、瑠々!」
「え~、ありがとうひまちゃんっ」


こういうときはいつも、何も言わないことを選ぶ、選んでしまう。
だから私だけ遠いところにいる。

自分の本当の気持ちを隠してみんなと接しているから当たり前だ。
それでよかったはずだった。

ううん、本当はこんなこと考えてなかった。