「俺、あと30分で帰るわ」
「え? う、うん、わかった」
なぜわざわざ教えてくれたのかわからず、語尾にはてながついたような口調になってしまった。
だけどその疑問について質問する勇気が出ず、沈黙が流れる。
ちゃりんちゃりんと自転車が走る音、とんとんコツコツと人が歩く音。
目の前の景色から織りなされる音しか聞こえない。
自分の秘密を知られてしまったからといって、特別親しいわけでもない彼との沈黙はまだ少し気まずかった。
視線をどこに置いたらいいかわからなくなり、結局私たちの間に座っているしいちゃんを見る。
いつもの通り撫でさせてもらい、少しでも心が落ち着くように願う。
するとそんな私を助けようとしてくれたのか、余計に乱そうとしたのか、スマホが着信を告げる。
「あ……」
反射で画面を見ると、そこには『瑠々ちゃん』と映されていた。
応答ボタンを押すことができず、心が揺れたまま画面をじっと見つめることしかできない。
それでも手の中でスマホはずっと鳴り続けている。
逃げるように顔を上げると桐谷くんと目が合った。
心臓がドキリと恐怖で音をたてる。
「……べつにいいんじゃねーの」
「え……?」
「出んのが辛いなら」
そう言われて、また視線をスマホに戻す。
「……うん」
そして静かにかばんの中にしまった。
本当にごめんなさい、瑠々ちゃん。
もしかしたら大切な用事かもしれない、何かあったのかもしれない。
瑠々ちゃんに対してひどいことをしているとわかっていながらも、それでも指が、心が動かない。
あとで……あとで、かけなおそう。
必死に言い訳をして、まぶたを閉じる。
「え? う、うん、わかった」
なぜわざわざ教えてくれたのかわからず、語尾にはてながついたような口調になってしまった。
だけどその疑問について質問する勇気が出ず、沈黙が流れる。
ちゃりんちゃりんと自転車が走る音、とんとんコツコツと人が歩く音。
目の前の景色から織りなされる音しか聞こえない。
自分の秘密を知られてしまったからといって、特別親しいわけでもない彼との沈黙はまだ少し気まずかった。
視線をどこに置いたらいいかわからなくなり、結局私たちの間に座っているしいちゃんを見る。
いつもの通り撫でさせてもらい、少しでも心が落ち着くように願う。
するとそんな私を助けようとしてくれたのか、余計に乱そうとしたのか、スマホが着信を告げる。
「あ……」
反射で画面を見ると、そこには『瑠々ちゃん』と映されていた。
応答ボタンを押すことができず、心が揺れたまま画面をじっと見つめることしかできない。
それでも手の中でスマホはずっと鳴り続けている。
逃げるように顔を上げると桐谷くんと目が合った。
心臓がドキリと恐怖で音をたてる。
「……べつにいいんじゃねーの」
「え……?」
「出んのが辛いなら」
そう言われて、また視線をスマホに戻す。
「……うん」
そして静かにかばんの中にしまった。
本当にごめんなさい、瑠々ちゃん。
もしかしたら大切な用事かもしれない、何かあったのかもしれない。
瑠々ちゃんに対してひどいことをしているとわかっていながらも、それでも指が、心が動かない。
あとで……あとで、かけなおそう。
必死に言い訳をして、まぶたを閉じる。