♢
「しいちゃん」
その日の放課後、いつものようにガレージに来てしいちゃんを撫でる。
今日はいいことがあった。
そのことを話そうと口を開いた瞬間、ガタンと奥で物音がした。
「え……」
まさかと思って覗くと、そこには桐谷くんが気まずそうな顔をしてソファーに座っていた。
「お前今日も来んのかよ……」
「そ、それは私のセリフだよ!」
「俺はここのガレージのじいちゃんに好きなように使っていいって言われてんの」
「えっ、そうなの?」
まさかそんな事情があるとは思わず驚く。
「ま、だからといって俺のもんなわけじゃねーし、早坂も好きにしたらいいと思うけど」
桐谷くんはそう言って、私の方へ近づいてくる。
「けど、愚痴やらなんやら話す前に周り見るようにしろよ。俺はもういいとして、誰がいるかなんてわかんねーんだから」
「う、うん。ごめんね」
確かに彼の言う通り、また同じことをやってしまうところだった。
今日話そうと思っていたのは愚痴じゃないけど、本人に聞かれるのも恥ずかしい。
なんだかいたたまれなくて俯いていると、桐谷くんが私の横に座る。
「こいつの名前、しいっていうの」
「え、うん。みんなしいちゃんって呼んでるよ」
「ふーん」
返事は素っ気ないのに、しいちゃんを撫でる手は優しい。
桐谷くんと猫というのはなんだかアンバランスで、少しおかしかった。
「……ふふ」
「なんだよ」
「ううん、桐谷くんも猫撫でたりするんだなあって」
「お前それバカにしてるだろ」
こうして私たちふたりと一匹のヘンテコな関係が始まった。
「しいちゃん」
その日の放課後、いつものようにガレージに来てしいちゃんを撫でる。
今日はいいことがあった。
そのことを話そうと口を開いた瞬間、ガタンと奥で物音がした。
「え……」
まさかと思って覗くと、そこには桐谷くんが気まずそうな顔をしてソファーに座っていた。
「お前今日も来んのかよ……」
「そ、それは私のセリフだよ!」
「俺はここのガレージのじいちゃんに好きなように使っていいって言われてんの」
「えっ、そうなの?」
まさかそんな事情があるとは思わず驚く。
「ま、だからといって俺のもんなわけじゃねーし、早坂も好きにしたらいいと思うけど」
桐谷くんはそう言って、私の方へ近づいてくる。
「けど、愚痴やらなんやら話す前に周り見るようにしろよ。俺はもういいとして、誰がいるかなんてわかんねーんだから」
「う、うん。ごめんね」
確かに彼の言う通り、また同じことをやってしまうところだった。
今日話そうと思っていたのは愚痴じゃないけど、本人に聞かれるのも恥ずかしい。
なんだかいたたまれなくて俯いていると、桐谷くんが私の横に座る。
「こいつの名前、しいっていうの」
「え、うん。みんなしいちゃんって呼んでるよ」
「ふーん」
返事は素っ気ないのに、しいちゃんを撫でる手は優しい。
桐谷くんと猫というのはなんだかアンバランスで、少しおかしかった。
「……ふふ」
「なんだよ」
「ううん、桐谷くんも猫撫でたりするんだなあって」
「お前それバカにしてるだろ」
こうして私たちふたりと一匹のヘンテコな関係が始まった。