「……桐谷くん」
「なんだよ」
「……私、ほんとはイチゴミルク好きじゃない」
「はあ?」


目の前の彼は予想通り、眉間にしわを寄せる。
その顔を見て、また胸が痛くなる。


「……お前、まさか好きなもんのことについても嘘ついてんの?」

「……うん。イチゴミルク好きな方がキャラに合ってるかなって、思って……」


罪悪感に苛まれながらも吐き出すと、彼は大きくため息をついた。


「お前、思った以上にめんどくせーな……」
「うっ、その通り、なんだけど……」


きっぱり言われるとやっぱり悲しくなる自分に、またひとつ嫌いが募る。

だけど思ったことをそのまま口に出してくれる桐谷くんにほっとした。
彼が気を遣って嘘を言ってくれたって、どうせ私はわかってしまうから。


「……それで? ほんとは何が好きなんだよ」
「え?」
「あるんだろ。それ買ってくるから正直に言え」


思わずぱちぱちとまばたきする。
めんどくさいと言いながら買い直して来てくれるなんて。
桐谷くんは私が思っていたよりも、ずっとずっと優しい人だ。

なんて、私がずっと見ないようにしていただけかもしれないけど。