「……すごいな」
「……え?」


彼から予想外の言葉が聞こえて、びっくりして顔を上げる。
桐谷くんは珍しく地面を見つめていて、憂いを帯びた表情をしていた。


「俺、よく言葉がキツイって言われるから。嘘もそんな上手くつけねーし。だからそれができる早坂はすげーなって、素直に尊敬する」

「……え」


周りの音がしーんと聞こえなくなる。
それくらい彼の言葉は衝撃的だった。

本当のことを言って貶されるだろうと思っていたのに、まさか褒めてもらえるなんて思わなかったから。


「また変な顔してる」
「えっ」


くすっと笑われて、一瞬どこかにいっていた意識が戻ってくる。


「とにかくそんな深く考えすぎなくてもいいんじゃねーの」


そう言うと桐谷くんは座っていた階段から立ち上がる。


「ま、早坂はそれができないから悩んでるんだろうけど」


少しぶっきらぼうに聞こえる言葉は、どこか優しかった。