「いいの!? 立候補してくれるのありがたいよー!」

「うんっ。だってゆいぴーが人魚姫役なら、同じ場面に出てくるのが多い魔女役がやりた~い。魔女ってかわいくてかっこいいしい。それにゆいぴーなら、瑠々が舞台の上で困ったときに助けてくれるでしょお?」

「え……」


ふわりと微笑む瑠々ちゃんはとても優しい表情をしていた。
間違いない、私のことを気遣ってくれているんだ。

瑠々ちゃんには桐谷くんとのことを全部話したから、幼稚園の発表会のことも知っている。


『ゆいぴーが舞台の上で困ったら瑠々が助けてあげる』


彼女はきっとそう言ってくれているんだ。
それが嬉しくて苦しくて、やりたくないと思っていた心の針が逆側へと動く。


「えー! それならわたしお姉ちゃん役やるー! 七瀬も一緒にしようよ!」

「ええ……」


ひまわりちゃんはやる気満々だけれど、対して七瀬ちゃんはやりたくなさそうだ。
でも七瀬ちゃんは案外甘いところがあるから。


「まあいいけど……ひまわりは結衣のお姉ちゃんって感じしないよね」

「え!? ひどくない!?」

「はいはーい、じゃあふたりも決定ね!」


あははっと教室が笑いの渦に包まれる。

私が返事できない間に、みんなの役が先に決まってしまった。
それも瑠々ちゃんたちは私が人魚姫役をするという前提で立候補しているのに。


だけどみんなと一緒なら、桐谷くんと一緒なら、今回はもしかしたら――