クラスの反応を見て「うんうん」と嬉しそうに笑ったあっちゃんは、焚きつけるように大きな声を出した。


「やっぱうちらって花のJK、DKじゃん? イケメンも美女も恋愛も大好物じゃん!? だから主人公はこの人たちしかいないよねってことで、独断と偏見で決めちゃいました! 王子様役は桐谷智明で、人魚姫役は早坂結衣でーす!」

「えっ」

「はあ?」


名前を呼ばれた私と桐谷くんの声は、すぐにクラスのみんなにかき消された。


「きゃー! 最高じゃん!」

「ふたりがいちゃいちゃしてんの見るってこと!? ウケるんだけど!」

「なあ脚本見て! これ智明が言うと思ったら腹いて―わ」


あははっと一気に盛り上がりだしたみんなを見て、私の血の気はサーッと引いていく。
人魚姫だと聞いたときから嫌だったのに、まさか自分が主役に選ばれてしまうなんて。


それも相手は桐谷くんだ。


思わず視線を向けると、彼も不快そうな、心配そうな顔で私を見ていた。

それはまるで、私が昔に彼を傷つけてしまったときの表情に似ていて、目が離せなかった。

その原因となったのは幼稚園の生活発表会。
演劇は同じ、人魚姫だった。