「じゃあこの時間は文化祭の劇について話し合いまーす!」


七瀬ちゃんたちと話す時間が近づいてドキドキしているなか、配られたプリントを見てドキンと心臓が嫌な音をたてた。


「えーと、うちらの学年は全クラス演劇発表ね。それで演目は人魚姫がいいなって勝手に決めました!」

「それってクラスみんなの意見聞いて多数決するもんじゃないの?」

「だって人魚姫やりたかったんだもーん!」


そう憎めない笑顔で話すのは通称あっちゃん。
声が大きくて明るくて、舞台を見るのが趣味な女の子。

文化祭係になりたいと自ら手を挙げた、やる気満々の舞台オタクだ。


「まあなんでもいいけど。劇とかしたくないし」
「模擬店がいいよね~、3年生羨ましい」


あっちゃんとは対照的にクラスのみんなのやる気はゼロに等しい。
もともと行事ごとはなんでも盛り上がる生徒が多いけれど、今回はモチベーションがないのだろうか。


「はーいはい! そう言うと思ってさあ、ストーリーは面白いやつにしといたよ!」


クラスの空気なんてなにも気にしていないあっちゃんは、3枚目のプリント見て~とみんなに呼びかける。
私もその言葉に従って紙をめくると、そこにはたくさんの文字が書かれていた。


「まずテーマは笑って泣けるラブストーリーね! 最後の終わり方なんだけど、原作とはだいぶ変えてるの。それからクラスのみんな全員が役者として出ることは難しいから、ミュージカル風にしてダンスとか取り入れてみたよ!」


ダンス、と聞いて何人かが反応する。
それはやっぱりダンス部のみんなだった。

そして他にも、役者は嫌だけれどダンスなら踊りたいという子たちがはしゃぎだす。