「……あのね、瑠々ちゃん」
「な~にゆいぴー」
「私、まだ隠してることあるの」
「教えてくれるの?」
「うん、聞いてくれる?」


いつもの笑顔で頷いてくれた彼女に安心する。
本当はこのことまで話すかどうかは迷ったけれど、瑠々ちゃんには知っていてほしいと思った。


だから全部話した。

桐谷くんとの関係も、ガレージでずっと相談に乗ってもらっていたことも、ふたりで遊園地に行ったことも。

瑠々ちゃんはずっと静かに聞いてくれていた。
だけど「……マジで?」とこぼした声がまるで別人で、これが彼女の素なのかもしれないと思うと少しおかしかった。


「ええ、瑠々が思ってた以上にゆいぴーがリードしてるんですけど~」

「り、りーど?」

「ゆいぴーの方が桐谷くんに好かれてそうってこと!」

「えっ、そうかな……?」


たしかにガレージで出会ったころと比べると仲良くなれているとは思う。
それに嫌われてはいないのでは、とも。

だけどだからといって自分の方が有利だとは思えなかった。
今日瑠々ちゃんと話していた桐谷くんはたしかに言葉はキツかったけれどいきいきしていたし。

それに私みたいな言いたいことも言えない女より、自分の意見をちゃんと言える瑠々ちゃんの方が彼は好きそうだ。
そんなことを頭の片隅で考えていると、ふふっと笑う声が聞こえた。

「じゃあ、瑠々たちはライバルってことでい~い?」

「え、ライバル……?」

「そ~! お互い桐谷くんの彼女になれるようにがんばるの!」


自分磨きのためにダイエット報告しあったりとか、桐谷くんの有力情報知ったら教え合ったりとか。
そう言葉を続ける瑠々ちゃんにまたじんわりと心が温かくなる。


「……ライバルってもっとバチバチしてるイメージだよ」

「バチバチもするの~! 抜け駆けしたら殴り合いだよ!」

「えっ、じゃあ私瑠々ちゃんに殴られる……」

「今回のはトクベツに許してあげる!」


きらきらと星が瞬く夜、私たちの声が響く。

絶縁でもされるのではないかと思っていた自分の秘密は、他人にとっては意外とちっぽけなもので。
瑠々ちゃんとの切れかけていた縁をぎゅっと結びなおせたことに心の底から安堵した。