「ゆいぴー、ほんとに桐谷くんと付き合ってない?」


瑠々ちゃんの口から告げられたのは予想通りの内容だった。
さっきは誤魔化してしまったけれど、今度こそは。

震えている手をぎゅっと握って口を開いたとき、瑠々ちゃんの方が先に「あははっ」と笑い声をもらした。


「何回もごめんねえ。だけどさ、やっぱりなにか隠してるんじゃないかな~って思ったの。瑠々のこと気にしてるならほんとに大丈夫だよ。友だちの彼氏はどんなに好きでもとらないって決めてるから。だからこそほんとのこと聞きたいの」

「え……?」


そんなこと初めて聞いた。
瑠々ちゃんはイケメンなら誰でもいいのかと思っていたけれど、まさかそんな信条があったとは驚いた。


「あ~! ゆいぴー、今失礼なこと考えてない!?」

「えっ、ご、ごめんね!」

「謝るってことは当たってるんだあ」

「う、瑠々ちゃんがそんなふうに考えてたの知らなかったから……」

「ふふ、いいよ~。そう思われるだろうなって自覚あるもん」


そう言って優しく笑う瑠々ちゃんは、なんだかいつもより大人に見える。
その人のことをよく知っていると思っていても、やっぱり見たことのない一面というのはあるんだなあ。

瑠々ちゃんは私が思っているよりもずっと大人な考えができる人だった。
そして人を愛すことがどんなことか、ちゃんとわかっている人。

私は彼女と出会った当初、恋愛脳で気分屋で子どもっぽい彼女のことが苦手だった。

だけど今は違う。
違うからこそ、瑠々ちゃんが真剣に向き合ってくれている以上、私もそうしなければならない。

私はまだ、彼女との縁を切りたくないから。
すっと大きく息を吸って、勇気を出して声を出した。