「やばっ、もう真っ暗じゃん!」


やっと涙が止まって気持ちが落ち着いたときには、結構な時間が流れていた。


「さすがにそろそろ帰らないとね。桐谷もごめんね、こんな時間までお邪魔して」

「べつにいいよ、どうせ親帰ってくんの遅いし」


そう言うと私をちらっと見る。


「早坂、家まで送る」
「えっ、ありがとう……でももう元気だし大丈夫だよ」


そうだ、そういえば寝る前に言ってくれていたなと思い出す。
あのときは本当にしんどかったしありがたかったけれど、今は全然元気だし――


「瑠々が送る」
「えっ?」
「はあ?」


突然の言葉に桐谷くんが眉をひそめる。
美形の人は怒った顔まできれいだけれどそのぶん怖い。


「ゆいぴーと一緒に帰りたいの、だから瑠々が送る」

「はあ……じゃあ勝手にすれば」

「うん。瑠々、ゆいぴーとふたりきりがいいから桐谷くんついてこないでね」

「はあ? なんなのお前」


また険悪な雰囲気だ。
瑠々ちゃんは桐谷くんのことが好きだと言っていたけれど、私には全くそういうふうには見えない。

彼女は好きになった人にはぶりっこであざとくて、とにかく甘い態度のイメージなのに。