「結衣。あたし、電話先であんたが倒れたとき死ぬほど心配したよ。それはそのことをあとから知ったひまわりや瑠々もそうだし、こうして看病してくれた桐谷だってそうだと思う」


ちらりと後ろにいるひまわりちゃんたちを見る。
みんな静かに七瀬ちゃんの話を聞いていた。


「しんどいって思ったなら無理しなくていいの。学校だって来なくていい。倒れる前に誰かに甘えて、頼って。……それはひまわりも一緒だからね」

「はっ、はいいっ!」


突然名前を呼ばれたひまわりちゃんはぷるぷると体を震わせた。
それくらい七瀬ちゃんは怖くて、優しかった。


「人間、完璧なヤツなんていないの。どこかしらはダメなところがあるの。結衣はいいひとで人気者だけど、ダメなところももちろんある。あたしらはダメなところも含めて結衣が好きだから一緒にいるの。いつも何をそんなに怖がってるのかあたしにはわからないけど、倒れちゃうくらいなら隠さないでよ」

「え……」


ぽたり、と涙が落ちる。
胸に熱いなにかがこみあげてくる。
それを止めることなんてできなくて。


「そ~そ~! だってさあ、ゆいぴーは瑠々の嫌だなって思う部分、正直言うとあるでしょ? それでもいつも一緒にいてくれるじゃん、それと一緒だよ~」

「うんうん! 友だちってそういうものだよ!」


にこっと笑うふたりの笑顔がまぶしくて、また涙が出る。

……そっか。
友だちって、そうなんだ。
3人はそんな風に思ってくれていたんだ。

中学生のときの出来事がトラウマで、自分は自分のままだと愛してもらえないのだと勝手に決めつけていた。
だから自分を偽って、だめなところを隠して、迷子になって。

だけど結局、言うほど自分のことを偽れていただろうか。