「あー、だからさあ……」


どうしようと焦っていると、桐谷くんも頭をがしがしと掻いて困っているようだった。

……ほんと、だめだなあ。

毎日嫌でもぽんぽん嘘をついて、言葉を壁にして自分を守っているくせに。
彼にはいつも助けてもらっているのに、彼が困っているとき私はなにも力になれない。

ああもうやだ。
ただの情緒不安定なのか、熱のせいなのかわからないけれど、また視界が滲む。


「因果応報」


涙がこぼれてしまいそうになったとき、七瀬ちゃんの声で顔を上げた。
みんな意味がわからないと言いたそうな顔をしている。

七瀬ちゃんにとっては予想通りの反応だったのか、そんなことは気にしない様子で口を開いた。


「悪いことをしたら悪いこと、いいことをしたらいいことが返ってくる」

「それ授業で習ったやつだー! そっか、結衣はいいひとでいいことをいっぱいしてるから――」

「そう。倒れたときも偶然優しい桐谷が拾ってくれて、その桐谷はただのクラスメイトでも自分の家に上げて手厚く看病してくれるすっごく優しい人だった。それだけでしょ。違う?」

「いや、違わねーけど……」


そう答える桐谷くんは七瀬ちゃんの言葉に同意しながらもどこか不満そうだ。
だけど瑠々ちゃんはさっきの説明で納得したのか「そっか……」とこぼす。

そして私を見て目を見開いた。


「えっ! どうしたのゆいぴー! やっぱりしんどい!?」

「あ、ちがうの、これは、私ってほんとだめだなあって自己嫌悪で……」


手で涙をぬぐうと、こちらを見る鋭い視線に気づいた。


「うん、だめだね」
「えっ」
「ちょっと、七瀬!?」


ひまわりちゃんが七瀬ちゃんを止めようとするけれど、それは叶わない。
ベッドに近づいてきたと思ったら彼女はしゃがんで私と目線を合わせた。

目つきは鋭くて、真剣で、少し怖い。
だけどそらすことなんてできなくて、そのまま七瀬ちゃんの言葉を聞く。