「あれ、桐谷くん、学校は?」
「サボった」
「え!? ご、ごめんね、私のせいで……!」


もしかしなくても私、彼にとんでもない迷惑をかけているのではないか。
そのことに気づいてどんどん焦る私とは対照的に、目の前の彼はおかしそうに笑った。


「べつによくサボってるから気にすんな。それに倒れたヤツほっとく方がやばいだろ」

「桐谷くん……」


温かさに触れて涙がぽろぽろとこぼれていく。
自覚があまりなかっただけで心身は結構疲れていたのか、いつも緩い涙腺がいつも以上に緩くなっている。

これでは彼にもっと迷惑をかけてしまう。
涙を止めなきゃと焦っていると、桐谷くんがベッドに腰掛けた。


「そんな泣いてると目腫れるぞ。泣き虫だな」


そう言って私の目元に触れる。
言葉はキツいのに、声音も表情も仕草も優しい。

それがまた温かくて嬉しくて、涙は止まるどころかあふれる一方だ。


「……桐谷くん、泣いてる女の子慰めるの上手くなったね」
「早坂がよく泣くからな」
「私のおかげ?」
「そうだよ」


冗談めかしたやりとりが面白くて、思わずふふっと笑ってしまう。

目の前の彼も一緒に笑っているのが見えて心の奥がじんわりと温かくなる。

あんなに重たかった気持ちが少しづつ軽くなっていく。