それから用意をして私も高校へと向かう。

何も特別なことはしていないのに、家を出て3分くらい歩くと勝手に涙が出てきた。


「え……」


ぽたぽたと溢れて止まらない。
周りの人の視線が恥ずかしくなって顔を隠す。

さっきまで悲しい気持ちだったわけじゃないのに、自分が泣いていると思ったらなんだか急に辛くなってきた。

そして同時に昨日のひまわりちゃんのことも鮮明に思い出してしまう。


「っ……」


声が出てしまいそうになるのを必死に抑える。
すると息を吸うのがどんどん辛くなって、頭が痛くなってきた。

全身がだるくて歩くのがしんどい。
それでも止まれず進んでいると、ふと隣で「にゃあ」と声がした。


「……しいちゃん?」


気づけばガレージのところまで来ていたらしい。
馴染みのある風景にほっとする。

するとカバンがブーッブーッと震えていることに気がついた。
携帯に着信がきていたようで、画面には七瀬ちゃんの文字がうつっている。


「……もしもし」

「あ、もしもし結衣? 昨日しんどそうだったから連絡したんだけど、大丈夫?」


まさかそんなに心配をかけていたなんて。
七瀬ちゃんの優しさが心に沁みて、温かくなるのと同時に痛みを感じる。

これ以上心配も迷惑もかけたくない。
だから大丈夫って言わなきゃ。

でも、だけど――


「……七瀬ちゃん、私、しんどい」


やっと言えたことに安心したのか、自分の体力の限界がきていたのか、意識が遠のいていく。


七瀬ちゃんとしいちゃんと――

桐谷くんの声がした、気がした。