ピピピピピピ――


「ん……」


次の日の朝、いつもより太陽がまぶしく感じた。
いや、まぶしいどころか、なんだか気分が悪い。


「結衣おはよう、朝ご飯作っておいたから食べてね」
「うん、ありがとう」


忙しそうに準備をする母親に返事をしながら、机に並べられた朝食を見る。

いつもなら美味しそうだと思うのに今日は違う。
それでもお腹は空いていて、一口食べてみる。


「っ……」


ダメだ、気持ち悪い。
なんだか吐きそう。

どうして?
変なものは食べてないし、咳も出てないし、喉も痛くない。
……でも、今日はちょっと寒い?


「……お母さん」
「んー?」
「えっと、もう行くよね?」
「うん。次の電車には絶対乗らなきゃ間に合わないから」
「そっか」


ちょっと体調が悪いかも、なんて言葉は引っ込んでしまった。
ただでさえ大変なのにこれ以上仕事を増やすわけにはいかない。

大丈夫。
ちょっと食欲はないけれど、たぶん熱はないし、大丈夫。


「じゃあ行ってくるね! 結衣も気を付けてね」
「ありがとう、いってらっしゃい」


にこっと笑っていつも通り手を振る。
ドアが閉まったあとに、朝食はそっと冷蔵庫にしまった。