「……うう」
「東さん! よかった、意識はあるのね!」
「ひまわり、大丈夫。今桐谷が先生呼んできてくれてるから」
「瑠々ブランケットあるから使って。床だと痛いでしょ?」


机と人の間から、ひまわりちゃんがこくこくと頷く様子が見えた。
静まり返っていた空間が騒然とした場へと変わっていく。
私も、私も行かなきゃ。


「東さん、まだ飲んでないお水あるから飲めそうだったら飲んでいいよ」
「保健室の先生たち呼んできました」
「車いす乗れそう?」
「オレ乗るの手伝うわ」
「さすがに帰るよね? カバンどうする?」
「じゃああたし教科書入れて持っていくよ!」


ひまわりちゃんと仲良しの子はもちろん、いつもはあまり関わりのない子まで、次々へと動いていく。
それでも半分以上は椅子に座ったまま。

だけど彼女と仲がいいのに動いていないのは私だけ。

今からでも遅くない。
私もひまわりちゃんのそばに行かなくちゃ。
大丈夫だよって声をかけなくちゃ。
何か手伝わなくちゃ。


わかってる、わかってるのに……
どうして私、こんなとき動けないの。


車いすに乗ったひまわりちゃんが遠のいていく。
同時に私の何かも自分自身から遠のいていく気がした。


「みんなありがとう。東さんの体調が気になるだろうけど授業続けるね」
「え~」
「ほら席に座って。えーと、どこまでやったかな」


ブーイングもすぐに鎮まり、いつも通りの授業風景へと戻っていく。
だけど私の動悸はおさまらない。
それでも声を上げるなんてもちろんできないまま授業を受けた。