黒板の前で話している先生の言葉を、今日もクラスの半分しか聞いてない授業中。
いつもなら私は真面目に聞いている側だけれど、今はそれどころじゃなかった。

教科書とにらめっこをしながら瑠々ちゃんに伝えるか伝えまいか、さっきからずっと考えている。

いつもなら桐谷くんが相談に乗ってくれているけれど、さすがに今回のことを話すわけにはいかない。
かといって七瀬ちゃんやひまわりちゃんに打ち明ける勇気もまだない。
それにふたりに変に気を遣わすわけにはいかないし……

ああもう、どうしようかな。
思わずため息が出そうになったとき。


ガッタン!!


耳が痛くなるほど大きな音がして一瞬何が起こったかわからなかった。

音のした方を見ると、そこには床に倒れたひまわりちゃんの姿が――
ひゅっと喉から音がした。


「ひまわり!」
「ひまちゃん!?」


すぐに七瀬ちゃんと瑠々ちゃんが駆け寄り、ひまわりちゃんの様子を見る。
怖いくらいに静かになった教室でふたりの声が響く。


「東さん! 大丈夫!? 誰か先生を呼んできて!」


授業をしていた先生が声を上げると、桐谷くんが立ち上がった。


「俺行ってきます」
「お願いね!」


廊下を走っていく音が遠のいて、私はやっと自分の指を動かすことができた。
心臓がドキドキドキドキと爆発するのではないかと錯覚するくらいに鳴っている。


私も、私も動かなきゃ。