「え!? 次は智明なの!?」
「ちょっとお! ひまちゃん声大きいよ~!」
「ふたりともうるさい。本人に聞こえても知らないよ」
「えへへ、ごめんごめん。とうとう来たかと思って」
「とうとうって言い方ひどくな~い!?」
「だってさ、逆になんで好きって言いださないのかなって思ってたくらいだもん!」
「まあ、それはたしかにね」
「ふたりともひどいよ~! 瑠々は誰でも好きになるわけじゃないんだから!」


私がなんて言おうか迷っているうちに話が進んでいく。
この感覚久しぶりだ。
最近はちゃんと会話に入ろうと努力して、聞き役に徹することはほとんどなかったのに。

何か言わなきゃ。
教えてくれてありがとう?
お似合いだね?
応援するよ?

ああ、ダメだ、どうして。
どうしてこんなに悲しい気持ちになってるの。
私、もしかして本当に桐谷くんのこと好きだった……?

わかんない。
全然わかんないよ。
誰かを好きになることってこんなに曖昧な気持ちだったっけ。


「もういいもん! 瑠々には天使のゆいぴーがついてるから!」
「わっ、瑠々ちゃん……!?」


またぎゅっと抱きしめられて、思考の海から引っ張り出された。


「ねっ、ゆいぴー」


ふふっとかわいく微笑まれて息が詰まる。
言わなきゃ、伝えなきゃ。
なんとなくだけどそう強く思うのに口は動かない。
だって彼女に何をどう伝えたらいいのか、自分がいちばんわかってないから。


「ふわ~あ」
「あ~! 瑠々が大事な話してるのに大きなあくび~!」
「ごめーん、ちょっと寝不足でさー」


ひまわりちゃんのおかげでまた別の話題へと移っていく。
そのことに安心しながらも、やっぱり心の奥が痛く重いままだった。