気持ちがふわふわしたまま七瀬ちゃんたちと雑談していると、ふと桐谷くんが視界に入る。
いつもならそのまま目線を外すけれど今日は気分がよかったからか、あまり何も考えないまま笑いかけた。

彼は少し間が空いたあとににこりと返してくれて余計に気分がふわふわする。


「結衣ー? 誰か友だちでも来た?」
「えっ、あ、ううん。もう行っちゃった」
「ええ~、残念だねえ。今の顔、好きな人見つけたって感じだったのにい」
「え!? 違うよ、私今好きな人いないし……!」
「えー! ほんとかな!?」


ひまわりちゃんと瑠々ちゃんにからかわれて顔が赤くなるのがわかる。
このメンバーには少しづつなんでも話せるようになってきているけれど、桐谷くんとのことは何も話せていない。

だけど好きな人がいないことは本当だ。
桐谷くんには確かに感謝してるし、最近は心の支えの一部になっていると感じる。

そりゃかっこいいなってドキッとすることもあるけれど、それは彼がイケメンだから仕方のないことだと思うし……

って、これじゃあまるで言い訳しているみたいだ。

頭の中でぐるぐると考えていると瑠々ちゃんが「好きな人と言えばさあ~」と口を開いた。


「瑠々、桐谷くんのこと好きになっちゃった」
「えっ」


顔をかわいく赤らめて小声で伝えられた言葉に思わず声が漏れてしまった。

瑠々ちゃんが、桐谷くんを……?
あんなにふわふわしていた心が急に地面に落とされる感覚がした。