「つかこんなときまで自分を卑下すんなよ。告白したヤツにも失礼だろ」
「えっ、あ、そうだね、ごめん……」


桐谷君の言葉が胸に重くのしかかる。
彼の言う通りだ。

自分のことを下げすぎると、自分のことを好きだと言ってくれる人のことも否定することになる。
そしてなによりそういった会話は相手からしたらめんどくさい。
『そんなことないよ』
たいていはそう言うしかないのだから。

わかっているのに、私の悪い癖だ。
恥ずかしくなって顔を伏せる。

すると横から「あー……」と気まずそうな声が聞こえてきた。


「悪い、言い方キツかった」
「えっ、ううんそんなことないよっ、そういうこと言ってもらえるのありがたいし!」


いつもより落ち込んでいるように見える彼を励まそうと言葉を紡ぐ。
しかし効果はない。


「……なんで俺ってキツイ言い方しかできねーんだろ。早坂は頑張ってんのにな」


そう力なく笑う桐谷くんはとても悲しそうだ。
彼にいったい何があったのかはわからないけれど、今日は気分が落ち込んでいる日なのだろうか。

正直意外だ。
私はよくこうしてネガティブになってしまうけれど、あの桐谷くんもそういうことがあるなんて考えたことなかった。

でも、当たり前か。
彼も同じ人間なんだから。