「なあ、なんでそんなモテんの?」


桐谷くんが近くに来たしいちゃんを優しい手つきで撫でる。


「……でもそれは早坂の努力の証なんだもんな」


いつの間にか怒りが鎮まったのか、声も表情もさっきと比べて穏やかなものだった。

なにか言わないと。
そう思うのに上手く言葉にできない。

桐谷くんはそんな私に気づいているのかいないのか、ふっと笑った。


「今日は俺が話聞いてもらわねえとな」
「しいちゃんだけ、に?」


思わずそう声に出すと、彼はしいちゃんから目線を外して私を見た。


「よかったら私も話聞くよ、いつも相談にのってもらってるし……」
「ははっ、ありがとな。そういえば早坂はもうこいつに話したいこと話せたのか?」


あ、話をそらされた。
そう気づいてもそれを指摘できるほどにはまだ強くなれていない。


「……うん。告白されたこと一番に言いたかったから、もう満足」
「は!?」


突然隣で大声を出されて肩が跳ねる。
桐谷くんは信じられないといったような顔で私を見ていた。


「誰から? つかいつ?」
「えっ、バイト先の人に、さっき……」


こんな反応をされるとは思っていなくて戸惑う。
どうしてそんなに驚いてるんだろうと考えてはっとした。


「あ、ええと、私が告白されるなんて意外だよね。でもバイト先でも結構猫被ってるというか、だからかなって」
「はあ? べつに俺なんも言ってないけど」


私的にはフォローしたつもりだったのに、彼の機嫌はもっと悪くなってしまった。