「ごめんなさい。私、先輩が思ってくれてるようなすごい人間じゃないので」
告白するのはもちろんだが、それを断るのにも勇気がいる。
相手は真剣に思いを伝えてくれたのだ。
私も真剣に向き合わないといけないだろう。
しかし、勇気を奮い立たせて伝えた言葉は先輩の言葉によって消えていった。
「なんで? 早坂さんはすごいよ」
「いえ、その、頑張ってる部分もあって……いつも明るいわけじゃないですし」
それどころか本当はネガティブだ。
だけど本当のことを話すことはできず、真実交じりの嘘をはく。
「まあ、人間だしそういうときもあるよね。でも俺は早坂さんのそういうところも知って好きになりたいんだ」
ぱちん、と世界の色が消えた感覚に陥る。
嘘だ。
そんなわけない。
本当の私のことを知ったら好きじゃなくなるに決まってる。
だって私は、小さいことでもずっと気にしてしまうくらいネガティブで、自分を守るためにいくらでも嘘をついて笑顔を作って、心の中では散々愚痴を言っておきながらその中のひとつさえ伝えることができない、ただの弱虫だ。
先輩と話しているのは、私だけど私じゃない。
またあんなことを言われるくらいなら――
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、ごめんなさい。先輩とは付き合えません」
心臓が痛くなってきたのを我慢して頭を下げる。
納得してもらえただろうかと先輩を見ると、眉をひそめた顔で口を開いた。
「ためしに付き合うとかでもいいんだ。付き合ってみないとわからないだろ?」
「ごめんなさい、そういうのも――」
「せんぱーい、そろそろそこにあるオレの荷物とってもいいですかー」
いったいどうしたら諦めてもらえるのかと気が遠くなったとき、突然大声が響き渡った。
思わず振り返るとそこには、同期かつ、同じ高校の相田くんがにこりと笑って立っていた。
「えっ、ああ、悪い」
「いや全然いいっすけど、バックルームで告白って。それも断られてるのにめっちゃ食い下がるし」
堂々と部屋に入ってきた相田くんは、先輩をバカにしているのか笑いながら話す。
なにひとつ遠慮しない言葉にヒヤヒヤしながらもほっと安心していると、先輩の顔が赤く染まっていった。
「なっ! 相田、お前っ……!」
「じゃ、オレら明日も学校なんで帰りまーす。結衣ちゃんも帰ろ」
「えっ、う、うん。先輩ごめんなさい、お疲れ様です」
ぺこりと頭をもう一度下げて、相田くんを追いかける。
どうやら先輩はやっと諦めてくれたようで、後ろから呼び止められることはなかった。
告白するのはもちろんだが、それを断るのにも勇気がいる。
相手は真剣に思いを伝えてくれたのだ。
私も真剣に向き合わないといけないだろう。
しかし、勇気を奮い立たせて伝えた言葉は先輩の言葉によって消えていった。
「なんで? 早坂さんはすごいよ」
「いえ、その、頑張ってる部分もあって……いつも明るいわけじゃないですし」
それどころか本当はネガティブだ。
だけど本当のことを話すことはできず、真実交じりの嘘をはく。
「まあ、人間だしそういうときもあるよね。でも俺は早坂さんのそういうところも知って好きになりたいんだ」
ぱちん、と世界の色が消えた感覚に陥る。
嘘だ。
そんなわけない。
本当の私のことを知ったら好きじゃなくなるに決まってる。
だって私は、小さいことでもずっと気にしてしまうくらいネガティブで、自分を守るためにいくらでも嘘をついて笑顔を作って、心の中では散々愚痴を言っておきながらその中のひとつさえ伝えることができない、ただの弱虫だ。
先輩と話しているのは、私だけど私じゃない。
またあんなことを言われるくらいなら――
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、ごめんなさい。先輩とは付き合えません」
心臓が痛くなってきたのを我慢して頭を下げる。
納得してもらえただろうかと先輩を見ると、眉をひそめた顔で口を開いた。
「ためしに付き合うとかでもいいんだ。付き合ってみないとわからないだろ?」
「ごめんなさい、そういうのも――」
「せんぱーい、そろそろそこにあるオレの荷物とってもいいですかー」
いったいどうしたら諦めてもらえるのかと気が遠くなったとき、突然大声が響き渡った。
思わず振り返るとそこには、同期かつ、同じ高校の相田くんがにこりと笑って立っていた。
「えっ、ああ、悪い」
「いや全然いいっすけど、バックルームで告白って。それも断られてるのにめっちゃ食い下がるし」
堂々と部屋に入ってきた相田くんは、先輩をバカにしているのか笑いながら話す。
なにひとつ遠慮しない言葉にヒヤヒヤしながらもほっと安心していると、先輩の顔が赤く染まっていった。
「なっ! 相田、お前っ……!」
「じゃ、オレら明日も学校なんで帰りまーす。結衣ちゃんも帰ろ」
「えっ、う、うん。先輩ごめんなさい、お疲れ様です」
ぺこりと頭をもう一度下げて、相田くんを追いかける。
どうやら先輩はやっと諦めてくれたようで、後ろから呼び止められることはなかった。