「でもどうして別れたの?」
「えっ、それは……」


どう答えたらいいか迷って視線を動かす。
しかし、クラスのみんなの興味が自分に集まっているのがわかって余計に焦った。

いっそのこと嘘をついてしまおうかと口を開いたとき、ひとりの男子が「それさあ」と先に話し出した。


「オレ本人に聞いたけど、たしか、ずっと心を開いてくれてないように思えて辛かったとか言ってたけど」


ドキン、ドキンと心臓が鳴る。
元カレがそういう風に話していたとは初耳だった。
あの人のことだ、どうせ自分が有利になるように話したんだろう。

どんな顔をしたらいいかわからなくて下を向いた。


「あとなんか、早坂のことクズだとか言ってたけど、そんなわけないじゃんね?」


続いて出てきた言葉にひゅっと息を呑む。
どう返したらいいか必死で頭を回転させていると、ガタンと椅子から立ち上がる音がした。


「おい、あんま勝手に話してると早坂に嫌われんぞ」


よく通る声で真っすぐそう言い放ったのは桐谷くんだった。


「デリカシーなさすぎ」

「人の恋愛事情によくずけずけと首ツッコめるよねえ~。瑠々そういうのだいっきらい」

「結衣はね! クズなんかじゃないから!」


七瀬ちゃんに瑠々ちゃん、ひまわりちゃんまでそう言ってくれて、嬉しくなるのと同時に安心する。
すると話していた男子は急に慌てだした。


「えっ! 悪い、オレそんなつもりじゃ……! 早坂あ、オレのこと嫌わないでくれえ~」

「だ、大丈夫だよ、嫌いになんてなってないから」


まだ心臓がドキドキと鳴っているのを隠して、にこりと微笑む。
そうすると男子は「よかった……」と言って落ち着いた。
クラスの興味からやっと外れることができてほっと安心する。


「さっきはありがとう」


七瀬ちゃんたち3人にお礼を言って、ちらりと視線を動かす。
すると桐谷くんも私を見ていたようで目が合った。
お礼を言いに行くか迷っていると、すぐに視線をそらされてしまう。

……なんか、怒ってる?

確信は持てないけれど確かにそう感じて、胸にモヤモヤが残った。