泣き止むと、葵は私を家まで送ってくれた。

『またね』

「…うん、またね」

笑顔で手を振り、別れる。

去っていく葵を、見つめて。

家に入るフリをして、庭に行き、縁側に
腰をかける。

すっかり夜になって、寒かったけど、
家の中にいる気分じゃなかった。

…息が、真っ白。

そっと、暗闇に溶けていく。

一人は、久しぶりだった。



ー…ねぇ、しーくん。

私、しーくんのことが本当に、本当に
大好きだよ。
 
ー「愛。

  葵のこと、落としてくれない?」

葵は…、ずっと仲が良かった幼なじみ。

しーくんは、葵と決別したあの日から
葵を嫌っている。

どうやら、嫌がらせ…復讐がしたいらしい。

腹いせなんて、後味悪いだけなのに。

…どうして、他の人を好きになれなんて
簡単に言えるの。

女たらしのくせに、そういうところが
鈍くて嫌。

私の本音くらい見抜いてよ、女の敵…。

私が、好きな相手は…ずっとずっと、
しーくんだけなのに…っ。