『ごめんねぇえ!』

昔のように、ガバっと飛びついたら、
葵は目を丸くした。

切なげに目を細めて、泣き止むまで
抱き締めていてくれた。

「…愛は、本当に手がかかる子だね…」

言葉とは裏腹に、優しい声だった。

子供みたいにワンワン泣いてしまった。

ごめん、ごめんね…っ、葵。

葵は、私のお兄ちゃんみたいな人。

私のこと甘やかしてくれて、
ちゃんと叱ってくれて。

私にとって、掛け替えのない、
大切な大切な、幼なじみだ。

あの日…全て終わってしまったと
思ってたけど。

…違った、何も、手遅れじゃなかった。

あの時、少しでも勇気を出して、
葵と時雨を引き留めていたら…。

何か、変えることができてたのかな…っ。

…葵は…、私のこと、時雨のこと、
ちゃんと大切だったのに。

どうして、信じられなかったんだろう。

…信じて、あげられなかったんだろう。

考えても、考えても、答えが出なかった。