「愛、ごめん。

 俺は愛とは付き合えない」

翡翠高校までやってきて、私を呼び出した葵は、バッサリ振ってきた。

…やっぱり、そうくるか。

キスで少しは揺さぶれたかと思えば、
葵は揺るがずに、わざわざ人がいるところで頭を下げてくる。

この前、人前でキスした仕返しかな?

…はぁ、こんなの断るしかないじゃない。

観念して、白旗を揚げて降参。

葵ってば、優しいけど、腹黒いよね。

何となく、こうなる予感はしてたけど。

『分かってるよ。

 葵は、彩羽ちゃんが大好きだもんね』

諦めたように言ったら、葵は顔を上げた。

あ。なんか、気まずそうな顔してる。

それもそうか、私、あの子の前で
葵にキスしたもんね…。

すっごく傷ついた顔をしていたのが、
今も鮮明に思い出せる。

黒髪が綺麗で、かわいい子。

多分、私とは真逆なタイプなんだろう
なぁ。

泣かせちゃったかな。

あの後、無責任にどっか行っちゃった
から結末は見届けてないけど。

しーくんの為とはいえ、良い子そうな
彼女…彩羽ちゃんを悪意で傷つけた。