彩羽を目にした瞬間、キリッとした
表情が崩れた。

「あーあー、かわいい顔で眠って…。

 危機感皆無かよ…」

俺からバッと彩羽を奪って、何か言って
いる。

心配と不安に満ちたその姿は、
どっからどう見ても。

『お兄さんですか?』

彩羽とは名字も違うけど、よく見たら顔が
似ている。

髪が黒色だったら、そっくりなんじゃね?

ポツリ、と溢した疑問に、日下さんは
「どうしてわかった?」と心底驚いたように
尋ね返してきた。

…え、いや勘だけど?

てか、何でそこで疑問形なわけ?

……もしかして、俺以外、気づいてないの?

…彩羽ですら?

日下さんは、何とも言えなさそうな顔で
俺を見ていた。

彩羽を抱えて車に戻ると、また俺のところへやって来る。

「…俺と彩羽は、確かに兄妹だ。

 でも、誰にも、…彩羽にも言ってない。

 …俺は、もともと、彩羽を捨てて
 傷つけた最低な兄だから…。

 バレたら、きっと、嫌われるから
 隠してたんだ」